Around the World in a DayのシングルB面曲

 続けて、当時に"Around the World in a Day"(1985)のシングルB面曲を。すべてアルバム未収録、後年の3枚組ベスト"The Hits/The B-Sides"(1993)まで入手しづらい曲だった。
 

 改めて聴くと三者三様で面白い。流出したブートでわかるように、もっともっと当時の録音曲は存在する。いっそ7"や12"、各国のアイテムごとに違う曲をばらまく手もあったと思うが、ワーナーがストップかけたかな。
 膨大なアイテムが毎回出る、後年なら実行されてたかもしれない。プリンスは既に自由を手にした後だったため、「商売っ気のある多様なアイテム」ってビジネス・モデルからは微妙に距離を置いていた。
 その代わり「次々と入手しづらい形で出る」という、もっとタチ悪い方法論をプリンスは取っていた。

 本盤の時代に戻ろう。本アルバムからは3曲がB面曲として発表だったが、バラエティも意識して選曲したっぽい。

"She's Always in My Hair"
 "Raspberry Beret"のB面、欧州と豪州のみのシングル"Paisley Park"のB面でもあった。
 サウンドの質感は"Purple Rain"から"Around~"へ至る過程。具体的には乾いたリズムとシンセが前面に出た、シンプルで華やかな曲。
 膨大なプリンスの声がダビングされ、主旋律があいまいになる後年の特徴を、存分に味わえる曲だ。リズムは打ち込みに聴こえるが、微妙なフィルがそこかしこで挿入された。
 さりげなくギターソロも混ぜ、ざっくりとヌケのいい音像ながらダビングが丁寧に施されている。テンポは緩やかで、不穏な揺らぎが心地よい。


"Hello"
 "Raspberry Beret"や"Pop Life"のB面曲として発表。そう、7"や12"によってカップリングが違う。当時は今ほど潤沢に情報無かったが、それでもどれ買ったら効率いいかわからず、なおかつお小遣いも無く。やむなくすべて買わない選択肢を取ってしまった。
 
 レボリューションズとのセッション風な楽曲。冒頭から女性コーラスが飛び出す。とはいえプリンスの多重録音かもしれない。"Purple Rain"直結の楽曲で、なおかつファンクネスが強い。
 喉を潰した独特の歌声が広がる。飛び交う"Hello"ってフレーズがクールだが、当時はポップさが足りないな、なんぞと思ってた。逆に、くっきり整理せず混沌をそのまま噴き出した。ライブで映えそうな一曲。今ならば、この粘っこさを美味しく味わえる。

 "Raspberry Beret"の12"Fresh Dance Mixとカップリングで、本盤のFresh Dance Mixもあり。オリジナルに比べ、3分ほど延長してる。
 残響を切った女性ボーカルから、やせ細ったエレキギターのカッティングに雪崩れるアレンジの曲。
 楽曲よりも演奏をたっぷり聴かせる趣向だ。楽曲構造はそのままに、まさにミックスやエコー感をいじったふう。これもプリンスが卓に向かって色々と作りこんだのかな。
 こういうドライな響きを聴いてると、"Parede"に直結する涼やかさが既にプリンスから生まれてたと実感する。

 やせ細って乾いたエレキギターが、ときおり音色をフィルター処理されながら飛び交うキュートさがこのバージョンの魅力だ。終盤ではプリンスの語りも入る。今聴くとヒップホップにつながるノリも漂った。リズムをあえて外したフロウがきまってる。

 今はこのロング・ミックスもMP3で容易に聴ける。


"Girl"
 "Pop Life"や"America"のB面曲。この曲を聴くたび、ビートルズの"Girl"にアイディア取ったと聴こえてならない。ささやくような呟きの"Girl♪"って部分が。
 ザクッと削ったサイケな密室ファンク。これは"Sign o' the Times"に通じる。
 
 淡々と拍頭を叩くシンセ・ベース。低音をぐっと閃かせ、プリンスは喉を開かずに多様な歌声をダビングした。語り掛けがそのままメロディアスに響く。夢見心地で歌声そのものが音質加工され妖しく輝く。
 シンプルで展開無くワンコードで突き進む、グルーヴ。そしてたまに和音がくるりと展開する。
 
 むせび泣くようなファルセット、粘っこく滑る地声、アイディアが一杯に詰まったシンプルな曲。素晴らしい。

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