The High Llamas 「Can Cladders」(2007)

 うっすらトロピカル。開放感より寛ぎを優先させた隙の無いアルバム。

 前作から4年ぶり8枚目のアルバム。じりじりと活動は続いてる。ビーチ・ボーイズの"Smile"あたりを連想する幻想的なコード感はそのままに、本盤ではねっとりしたリゾート感が漂う。
 リズムをGoldtopスタジオで録音後、自宅でコーラスをダビング。その後にTrinityスタジオへ向かい弦やハープ、マリンバをかぶせたとある。実際の印象はバンド的なダイナミズムは希薄で、まさに最後のダビングした弦やハープなどがふくよかに飛び交うサウンドだ。
 空気の澱んだ、人工的に爽やかな密室感を漂わせる独自の美学は本盤でもじっくり味わえる。

 リズムは乾いてひしゃげ、ブラシのように軽やかだ。アコギのアクセントがリズムを補強した。
 "Can Cladders"の意味が分からない。Canはシンプルに缶でいいとして、CladdersはCladderの複数形。Cladderとは「(construction) One who applies cladding, or insulation.」とある。
http://ejje.weblio.jp/content/cladder
 Collinsでは「a person who clads (roofs or walls)」
http://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/cladder
 ・・・ええっと、どういうこと?「缶の造形物」でいいの?「磨かれた缶たち」?

 サウンドは牧歌的かつ穏やか。オヘイガンと女性コーラスの対比構造も目立つ。リズムは刻みに留まり、どこまでも優しい。牽引よりも足がかり役のようだ。
 全13曲だが数曲は1分未満の小品でインタルードみたいなもの。実質は10曲の美しも滑らかなポップスが詰まった。

 そう、ここにはリゾートの涼やかさは無い。優美に飾られ破綻を排し、緊迫や瞬発を避けて、緩やかににこやかに過ごす強固な小宇宙が作られている。貴族の宮殿みたいなものか。

 さらにデジタル要素を注意深く薄めて、生楽器の響きを大きく取り入れた音作りもイギリスっぽい。上流社会目線で、下世話な夾雑物や人工物を除去して、純朴な美しさを目指した。
 (10)のリズムで聴けるリズム・ボックスなど、機械仕掛けはある。そもそもこのタイトなアンサンブルはデジタル録音ならでは。けれども質感は人の声とストリングス、そして生楽器。それらのふくよかさを生かした。

Track listing:
1. "The Old Spring Town" - 3:29
2. "Winter's Day" - 4:48
3. "Sailing Bells" - 3:03
4. "Boing Backwards" - 0:44
5. "Honeytrop" - 3:40
6. "Bacaroo" - 3:23
7. "Can Cladders" - 3:26
8. "Something About Paper" - 0:38
9. "Clarion Union Hall" - 4:32
10. "Cove Cutter" - 4:13
11. "Dorothy Ashby" - 3:03
12. "Rollin'" - 3:52
13. "Summer Seen" - 0:51

Personnel:
The High Llamas
 Dominic Murcott,John Fell,Marcus Holdaway,Pete Aves,Rob Allum,Sean O'Hagan

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