Medeski Martin & Wood 「Shack-man」(1996)

 バンドにこだわり何とも定義しづらいセッションが詰まった、4thアルバム。

 NYのアンダーグラウンドジャズを基調ながら、昔はジャムバンド系譜でも語られ今はジョン・ゾーンのセッションでジョン・メデスキの名を僕は良く見る。91年に活動を開始し、別に活動停止ではない。今年2016年の9月には結成25周年ライブ・ツアーを行ってる。
 どことも結託せず、どこにも頼らない。独特の曖昧な立ち位置が、じわじわと長く続いてるイメージだ。

 とはいえぼくはメデスキ・マーティン&ウッドを熱心には聴いてない。一番聴いたのが5th"Farmer's Reserve"(1997)かな。それも特に理由あったわけでなく、名前は聴くがどんな音楽だろう、とレコ屋で適当に掴んだってだけ。あとは3rd "Friday Afternoon in the Universe"(2003)と10th"Uninvisible"(2002)くらい。思ったより聴いてないな。
 ほとんどぼくは、ジョン・ゾーン関連の盤で聴いてるほうが多い。

 で、本盤。特に理由なく手に取った。聴いたことなかったな、と。しかし予想以上に掴みづらい。オルガン・トリオのファンキーなセッションが続くのは分かる。グルーヴィで気持ちいいし、単なるノリ一辺倒でなく、リズムやフレーズにひねりを入れて、癖のある音楽を作ってると思う。だが、その文脈や流れを頭の中でカテゴライズできない。もう20年も前のアルバムなのに。

 ジャズ、ファンクが基調。カントリーみたいな軽やかさも混ぜていそう。かといって理に走る欧州系でなく、瞬発的な肉体性を生かしたアメリカンなノリだ。(2)みたいに超ファンキーでポップな曲をやったと思えば、いきなりフリー気味の暗い(3)につなげる。
 振り幅広いと言えば聴こえはいいが、むしろ一貫性が無い。

 ハワイのスタジオで6月に録音された。のびのび音を作り、ミックスはニュージャージー。さらに編集をニューヨークで煮詰めた。じわじわと東の地元に帰りながら作り上げてる。

 トラッドの(1)で始まる本盤の収録曲は、あとすべて3人のオリジナル。長尺で垂れ流さず数分台にまとめ11曲を詰め込んだ。ラジオの放送を意識ってわけでもないだろう。この一曲にまとめるって精神に、ポイントがありそうだ。その気になったら長尺1曲で延々と続ける方法もあるんだから。

 楽曲ごとに三人ともアプローチを変える。クリス・ウッドはコントラバスとエレキベースを持ち替え、ギターのクレジットもあり。メデスキはオルガンにこだわらず、エレピを色々弾き分ける。その割に生ピアノを弾かないのがこだわりか。

 そう、本盤は三人ともM,M&Wの可能性を拡大した。楽器を変え、リズムパターンやアレンジのアプローチを変え。五目味まで、派手に散らばさない。だが一曲づつは少しづつ違う。しかし例えば生ピアノ路線のピアノ・ジャズみたいな親しみやすさは狙わない。
 あくまでも尖った前衛路線は崩さなかった。

 過去3作のクレジットを見ると、M,M&W以外にゲスト・ミュージシャンを迎え続けていた。だが本作は、三人だけ。ダビングがあるのかもしれないが、あまり厚みを出さない。三人だけで、音楽を初めて作り上げたアルバムが本作になる。

 本作で自信をつけたのか、続く"Farmer's Reserve"(1995)も三人のみ。だがこの作品はインプロを追求している。その次からはまた、曲によってゲストを招いた。
 つまり本作だけがこの10年くらいで唯一、M,M&Wにとってポップ要素や"楽曲"を意識した、トリオ編成にこだわった盤となる。その実験や方向性の模索を収めた。
 
 いわゆるソロ回しでも、完全ジャムの集団即興でもない。楽曲をとらまえて演奏し、かといって固定させたイメージは作らない。
 でもときどき、凄くキャッチーなアンサンブルを見せる瞬間もあるんだよな。ポップとは言い難いが、粘っこく迫る(5)や(6)みたいな曲も、凄く耳に粘りつく。

 たぶん聴きこんでいくほどに、本盤は味わいを増す。音色、リズム、パターン、展開。即興に頼らず、形式にもとらわれず、ジャンルも飛び越して、M,M&Wは本盤でさまざまな実験を行ってる。
 音楽そのものに対してではなく、自らアンサンブルの可能性を追求のため。そんな奥行きと深さを漂わすアルバム。まだまだ、聴きごたえがいっぱいな作品だ。

Track listing:
1. Is There Anybody Here That Love My Jesus - 4:27
2. Think - 5:16
3. Dracula - 4:16
4. Bubblehouse - 4:27
5. Henduck - 4:38
6. Strance of the Spirit Red Gator - 7:06
7. Spy Kiss - 4:22
8. Lifeblood - 7:06
9. Jelly Belly - 4:42
10. Night Marchers - 4:26
11. Kenny - 4:43

Personnel:
John Medeski - Hammond B3 organ, clavinet, Wurlitzer electric piano, Pianet T, toy piano, Yamaha CSO1 II
Billy Martin - drums, percussion
Chris Wood - acoustic bass, electric basses, guitar


関連記事

コメント

非公開コメント