Princeの新譜2枚。

まず告白する。プリンスは大好きだが、なぜか発売直後は良さが分からない。
常に数作前の作品がベストに思える感じが、かれこれ20年間続いてる。つまり何年も聴き続けないと、しみじみ自分の中に沁みてこない。情けない話だが。
今、ようやく「"Lotusflow3r"(2009)が良いなー」と思ってるしまつ。

プリンスを知ったのは"Purple Rain"(1984)がリアルタイム。以降、"Lovesexy"(1988)までは先駆性のまま夢中で惹かれた。一枚選ぶなら、依然として"Lovesexy"。
だが"Batman"(1989)のポップさに躓いた。「なんか違う」と毎年のアルバムを聴きながら、時間が立った。

でも96年くらいかな。出張がえりの飛行機、機内放送で"Diamonds and Pearls"(1991)がムチャクチャ胸に来た。夜の着陸寸前、街明りにプリンスの美しい曲がきれいにハマった。
そこから数年、"The Rainbow Children"(2001)でようやくプリンスの良さが分かったのかもしれない。一応すべてのフィジカル・リリースはリアルタイムで聴いてきた。
でも旧譜を聴きかえし「ああ、ここが良いのか」と再確認を続けて、新譜を後追いで味わうという逆説的な日々が続いている。

前置きが長くなった。今回、プリンスが2枚のアルバムを同時発売した。
"The Gold Experience"(1995)年から19年ぶりにワーナーとディストリビュート契約を任せるかたちで。

膨大な録音と旺盛な創作力を誇るプリンスだが、アルバムは"20ten"(2010)以来と間が空いてる。よっぽどレコード会社に中間搾取されるのが嫌みたい。2億とも言われるギャラでライブを活発に行い(http://amass.jp/41240)、ダウンロード販売を模索してたのがここ数年。

今回の収録曲を見ると、試行錯誤の過程が伺える。ざっと整理してみた。
まずPrince名義の"Art official age"。13トラック中、宣伝兼ねた事前発表曲も併せ、4曲が収録された。
(事前発表曲)
"Breakfast Can Wait"(2013/10)
"Breakdown" (2014/4)
"Clouds"(2014/8)
"U KNOW"(2014/9)

今回のアルバムに漏れたのが、以下の5曲。1曲をのぞき、DL形式で発表された。
(未収録曲)
"Dance 4 Me"(2009)
"Extraloveable"(2011)
"Rock and Roll Love Affair"(2012)★実リリース有り
"Screwdriver"(2013/1)
"Fallinlove2nite"(2014/3)

一方のPrince & 3RDEYE GIRL"PLECTRUMELECTRUM"は12曲が収録。事前発表は3曲。1曲が未収録となった。
(事前発表曲)
"Fixurlifeup" (2013/5)
"Pretzelbodylogic"(2014/2)
"WHITECAPS"(2014/9)

<未収録曲>
"Live Out Loud"(2013/2)

今回の2枚のアルバム発売の発表は8月末だから、ずいぶん唐突な感じある。しかしプリンスは着実に活動は披露し続けてきた。

20Tenツアーを2010年に行った後、"Welcome 2"ツアーを2010~12年に断続的にリリース、13年は年初に3RDEYE GIRLを発表し、"Live Out Loud Tour"を3rdeyegirlと行った。これがYoutubeなどで映像がポロポロと発表される。

すなわち"20Ten"(2010)以降、DLや映像で断片情報を漏らして渇望を煽る、丁寧なプロモーションを行った。一方のツアーで収益確保のビジネス・モデルだろう。
プリンス(か、周辺スタッフ)の成果が、満を持しての今回のリリースと思う。

アメリカの状況や、今の若者全体のメンタリティは良くわからない。だがぼくの歳だとどうしても「アルバム発表が活動の象徴」ってイメージが拭えない。
どんなにライブやDLやっていようとも、65年以降のロック産業が築いた「アルバムが活動の一里塚」って宣伝戦略から脱却できない。

プリンスの録音は時代ごとに明確な変換を感じる。
デビューからしばらく録音はドライさとエコー感のバランスを模索、いずれにせよアナログ的な野太い響きを上手いことテープに封じ込めてきた。
だが"Batman" (1989)から"Love Symbol"(1992)まで上滑る。妙なデジタルでカチカチなマスタリングが続いた。

"Come"(1994)あたりから卓までプリンスが押さえ、緻密さが増してる気がする。
"Rave Un2 the Joy Fantastic"(1999)の豪華な宅録の空気感で一瞬模索したが、"The Rainbow Children"(2001)から再び太い音を意識と思う。
特にここ数作での、楽器の分離と溶かし込みを探る音像作りも聴きどころだ。

というわけで、ようやくプリンスの新譜2枚を聴いた。
"Art official age"はスタジオ作業を丁寧に施した密室的な作品で、"PLECTRUMELECTRUM"がキャッチーなファンクを集めた印象あり。聴きこむうちに、またぼくの評価は変わるはず。何年後か知らんが。

聴くたびに評価が変わるミュージシャンの活動を、同時代で味わえるのは幸せなことだ。
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