TZ 7398:John Zorn "Templars-In Sacred Blood"(2012)

 プログレ的でコンセプト色が強まった、ムーンチャイルドの6th。

 ジョン・ゾーンの疑似バンドの一つ、ムーンチャイルド。ゾーンによる近年の疑似バンドの多くは、ラウンジ色が強い整ったアンサンブルが多い。そんな中で唯一ハードコア的な要素をみせるユニットである。
 本盤はトリオ編成のコンセプトを拡大し、オルガンでジョン・メデスキが参加。サウンドはぐっとプログレ色が増した。アドリブのフレーズ以外は、すべて譜面だろう。ソロ回しや即興要素はかなり薄く、きっちりゾーンにコンダクトされた。スピードは抑え、ぐっと重厚で昏く光る凄みを出す。

 タイトルのTemplarsとはテンプル騎士団を指す。第一回十字軍が終了後の1119年に創設され、1312年の異端裁判で教皇庁により解体された。
 騎士、従士、修道士、司祭から構成され、キリスト教の軍隊だが資産管理も行い、教会に頼らず組織の独立運営を行うところが特徴のようだ。
 白と黒のツートンを背景に赤い十字がシンボル。本盤のジャケットでも同様の絵面が採用された。各棒の先が3つに分かれるところが、Wikiにあるテンプル騎士団の旗印と違う。意図的なものか、単なるデザインの話かは知識不足でコメントできないが。

 ユダヤ教の立場だとキリスト教の十字軍はイスラム教徒と同様に、殺される側に当たる。ゾーンとしては十字軍を礼賛のスタンスでなく、非難の対象と捉えているようだ。
 パットンは叫びに留まらず明確な歌詞も喉から出す。シャウトだけでなくつぶやきも含めて。

 そう、本盤は音楽よりもっと、コンセプトへ軸足を置いた。ゾーンの作曲作品の一環であり、音楽スタイルとしてムーンチャイルドを採用したって位置づけ。
 全8曲のタイトルを上手く訳せないが、たぶんこんな感じか。

1.寺院の書
2.バフォメット(キリスト教の悪魔)の呼び出し
3.魔術師の殺人
4.預言者の魂
5.私を救って(?)
6.次の聖域
7.思い出
8.秘密の儀式

 ゾーンのオカルト趣味が全開で、なおかつ不穏で血なまぐさい雰囲気が漂う。異端を許さぬキリスト教への価値観へNoを提示し、うさん臭いムードを漂わせた。

 なおオルガンは全編でなく、ゲスト的な位置づけ。例えば(5)ではトリオで疾走する。変拍子で小刻みに場面転換するさまは、今回もルインズを強烈に連想する。オペラチックな幻想性も含めて。だがパンキッシュな破壊衝動とは別ベクトル、明確にコントロールされた知性も感じた。

 ふわふわと漂うオルガンが加わると、音像が一気に物々しくなる。スピーディで拍頭をずらすドラムと、ディストーション効かせたタイトなベースのアンサンブルが、一気にオルガン音色で荘厳さを増すせいだ。
 ここではジャズのスイング感や、現代音楽の抽象性は狙わない。ロック的なダイナミズムに、オルガンの分厚い空気でおどろおどろしさを出した。
 
 うーん、やっぱりプログレって言葉が頭に浮かぶ。ある意味、とても聴きやすい盤だ。パットンの叫び交じりのボーカルに馴染めば、もっともロックに直結したダイナミズムあり。さらにオカルティック風味の世界観付けで稚気も感じさせる。
 そういう意味でゾーンは枯れてない。厨二的なかっこつけを隠さない。
 さらに絶妙な演奏テクニックを滑らかに指揮する妙味で、隙無く洗練させた。

Track listing:
1.Templi Secretum
2.Evocation of Baphomet
3.Murder of the Magicians
4.Prophetic Souls
5.Libera Me
6.A Second Sanctuary
7.Recordatio
8.Secret Ceremony

Personnel:
Joey Baron: Drums
Trevor Dunn: Bass
John Medeski: Organ
Mike Patton: Voice


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