河端一 「Osaka Loop Line - Kawabata Makoto Early Works」(1981)

 栴檀は双葉より芳し。17歳の河端一によるサイケ・エレクトロ。

 あまり伝説めかして詳細分析する作品ではないかも。しかし貴重で興味深い作品だ。良く今まで残ってた。ありがたい。
 アシッド・マザーズ・テンプルを率いる河端一は、学生時代にミュージック・コンクレートや現代音楽への興味が発端と言う。そんなことなどが読める、このロング・インタビューが非常に興味深い。
http://www.ele-king.net/interviews/003043/

 本盤は、高校時代に河端一がカセットに録音したシンセの多重録音。クラフトワークの"アウトバーン"に影響され作ったそう。上記インタビューによれば、当時に地元のレコード屋へ委託で置いてたという。
 あらためてAMTの自レーベルから07年にリイシューされた。当時の音源はどの程度残ってるのかな。原盤番号は(REP-028)とクレジットある。28本目ってこと?当時40本ほど作ったそうだから、不思議はない番号だ。
 
 この音盤は様々な意味で、才能に満ちている。
 録音機材が手元にあって、なおかつ楽曲として作り上る。さらに録音して、作品として設定する。この手順を踏まなければ、こういう音源は残らない。だれしも子供の頃に、手すさびに音楽で遊んだ経験はあるだろう。だがそれを楽曲と意識した人が、どれだけいるか。それを何人が、録音しようとするか。
 さらに記録しても「作品」として意識できるか。いくつものハードルを越えることが、意識を作ることが、才能として大きな違いだとしみじみ思う。どこまで客観視できるか、につながることだから。

 この作品は自分でもできらあ、って傲慢な意味ではない。確かにアイディア一発で本作はできている。しかし取捨選択し、作品として昇華する集中力と意識づけ。この目線を持つことが既に才能と思う。
 だれでも同じことができることと、それを意識的に行い構築することは明確に異なる。
 裏ジャケのサングラスかけた生意気そうな少年が河端だろう。ちょっと頬を膨らませた表情は、今にも通じる。R.E.P.Studioで録音とは、自宅のことか。
 
 本盤はかなり冗長で、作品としてはもどかしい。しかしあの河端が、17歳の時に、と物語性をつけるだけで本盤の目線が変わる。芸術と一緒だ。ストーリー付けを許容する背景と懐深さこそが肝心だ。

 とはいえ本盤、音楽としても興味深い。前半は猛烈なリバーブの中、つぶやくような青年の声でナンセンスな歌詞が歌われる。
 そのあとはひたすらドローン。キンコンと硬質になるリズム・ボックスへベースと唸る電子音が延々と続く。テープ録音と処理で潰れた音質の悪さは幻想的なムードの強調に一役買った。
 ミニマルでサイケなドローン。ただ単調にノイズが続くだけだが、繰り返す幻想的なパターンと解釈したら、妙な味わいが本盤から現れる。
 
 たぶんテープも音楽もすべて流しっぱなし。単に繰り返される音を、延々と録音しただけだろう。
 だが、パターンとしてまとめ、記録を行う精神構造こそが才能だ。この音源に価値性を認め残し続けた物持ちの良さも含めて、才能と言っていいかもしれない。残っていなければ、鑑賞や評価もできない。

 46分テープのB面は、また違う作品。こっちのほうが聴きやすいか。重厚な低音のうねりに、キラキラするシンセが蠢く。まさにこっちは、今のAMTに直結する音楽性だ。
 やがてA面と同じリズム・ボックスが淡々と刻んでいく。硬質で耳に残るクリックがドローンのサイケな世界を明確に区切って、奇妙な居心地の悪さを産みだした。混沌と無機質に、正確で規則正しいビートの区分化は似合わない。

 シンセの音はいくつもダビングされ、幾層にも積まれた。こっちをA面にしたら本盤の評価はぐっと上がる。
 根本はA面と同じく、繰り返し。しかしシンセの音色や組み合わせがいくぶん複雑なのと、妙な和音感がこの曲に躍動性をほんの僅か付与した。
 ただし途中から音数が減り、A面と似通った世界観に至る。これは意図的なものか。B面冒頭が華やかだっただけに、判断に迷うところ。

 なおこのB面、最後にリズム・ボックスが消え電子音だけに。ヘリのローターみたいな響きが続き、ふっと浮遊する感覚が心地よかった。
 いずれにせよ、まさにブレない。特にB面。河端の志向や趣味は高校の頃から一貫してるとしみじみした。

Track listing:
1.Osaka Loop Line Pt.1 22:31
2.Osaka Loop Line Pt.2 22:43

Personnel
Instruments, Voice;河端一
Recorded at R.E.P.Studio,1981

関連記事

コメント

非公開コメント