ジャージー・ボーイズ

クリント・イーストウッド監督、フォーシーズンズの歴史を元にした映画を見てきた。面白かった。05年開幕のミュージカルを下敷きに映画化か。
フォーシーズンズのヒット曲がバンバン流れ、小気味よいテンポでストーリーが進む。フォーシーズンズをちょっと知ってる人に、お薦め。
映画館を出るとき「良い曲だ、CD欲しくなった」と言ってる観客がいたが、まさにそんな人に向けた作品だと思う。

オールディーズ・マニアだと突っ込みどころは満載。フォーシーズンズのファンにも苛立つ点が多い。だが映画は楽しめる皮肉な作品だ。なにせ、曲に罪は無い。

おまけにこの映画、エグゼクティブ・プロデューサーにフランキー・ヴァリとボブ・ゴーディオが名を連ねてるとこが、よけい始末に負えない。要するに主要メンバーによる公式映画っぽい仕立てながら、実に大人げない登場人物やシナリオ設定になっている。
とはいえ主活動の性質上、これまでのロック評論分野で語られにくいフォーシーズンズなだけに、この映画を踏まえて彼らの認知度アップを願ってやまない。

ビーチ・ボーイズは"ペット・サウンズ"の奇妙な持ち上げられ方を足掛かりに、伝説として大きくクローズアップされた。でもフォーシーズンズはいまだに「"シェリー"のグループね」、って扱いがあまりに惜しいから。

とはいえ映画は胸熱の場面がいっぱい。「ヴァリのスペルをYでなくiにしたら」ってアドバイスのセンスや、イタリア系文化の価値判断が新鮮で興味深かった。
音楽の場面も、教会での"A Sunday kind of love"や、ボブ・ゴーディオのオーディション・シーンな"Cry for you"、クライマックスの"Can't take my eyes of you"など目白押し。エンディング・クレジットのミュージカル風シーンも良かったな。
どれも、時代設定はめちゃくちゃだが。

登場人物設定はヴァリが「友情に熱い天才シンガー」、ゴーディオが「才能あふれる実直な作曲家」と描かれ、さすが金出しただけある持ち上げられっぷり。
(なおボブ・ゴーディオはつい先月、9/11に他界。知らなかった)
逆にトミー・デヴィートは「金にルーズな変人リーダー」、ニック・マッシは「役立たずのオマケ」と扱われる。ボブ・クリューは「オカマの敏腕プロデューサー」。

チャーリー・カレロに至っては「ちょっと腕のあるドサまわり用コーラス」として、名前と登場が1回づつあるだけ。
それはないだろう、おい。

映画の演奏曲は、英語のWikiにまとめられていた。これは便利だ。
作品時期はVee Jayからフィリップスの初期とカーヴ時代を中心、モータウン時代はごっそりカットで残念。

ということで、ヲタクなツッコミを少々。あのストーリーが正しいなんて、絶対に思ってほしくない。ただしメンバーが若いころの逮捕歴はホントらしい。

フォーシーズンズはヴァリ、ゴーディオに加え、クリューとチャーリー・カレロ、この4人による才能が集まってこその、サウンドだ。映画のカレロの扱いは、あまりにひどい。他の歴代フォーシーズンズ・メンバーも丸無視とはねぇ。

映画の冒頭は、52年くらいの設定だった。
だが最初のほうのシーンから。素人なヴァリがクラブでトミーに誘われ飛び入りで歌う前、バンドがちょっと演奏してたフォー・ラヴァーズの"You're the Apple of My Eye"。これは既にかれらがデビュー後、全米62位だかの中ヒット曲。1956年、ヴァリが22歳のとき。

ヴァリが泥棒の見張り役で歌った"Silhouettes"はThe Raysの57年の曲。作曲はボブ・クリュー。これは、スタッフのシャレかな。

ゴーディオを抜擢の引き合いに上がったタモリ倶楽部の"Short Shorts"も57年の曲。
クリューのオーディションで演奏の"Cry For Me"はCholli Mayeのためにゴーディオと『ヴァリの』作品。しかしこの曲、知らなくて新鮮だった。ヴァリは66年にシングルB面でカバーしてる。

The Angelsの"My Boyfriend's Back"(1963)のシーンは妙な色気と、間抜けなハンド・ダンスのギャップが凄まじくギャグ。あれは笑っていいのやら。

ついでにビッグ・ヒットの"Sherry"は62年。ヴァリが28歳のとき。つまりけっこう下積みが長かった。なお"Big Girls Don't Cry"創作のきっかけが、ロナルド・レーガン大統領が出演の映画"Tennessee's Partner"(1955)を見てってのは、本当らしい。
"Can't Take My Eyes Off You"は67年の曲。借金返しにヴァリがドサまわりを続け、ついにこの曲を歌った、って時間感は、映画でも上手く表現されてたな、そういえば。

ヴァリは確かに売り上げの浮き沈みも含めて、苦労人だと思う。歌の才能とは裏腹に。過去を美化したい脂っこさは、別に否定しない。どうせだったらフォーシーズンズの名前を一切出さず、"ジャージー・ボーイズ"って架空のバンド設定で、あの物語を描いて欲しかったけれど。

とはいえ、映画は面白かったよ。最後にもう一度強調します。いや、ほんとに。
50~60年代のセピア色な風景で、派手で大量消費の大人文化で、煙草ブカブカふかしまくりで、妙に豪華な世界観は、殺伐さが欠片も無くて良かった。

しかしステージ描写は大人向けのクラブやレストランでのシーンばかり。あそこが、リアルタイムで無いぼくには、リアリティが判然としない。ティーン向けとは違ったのかな。
十代はラジオだけ、実際のライブ・ツアーは大人向けレストランって区分けが、当時のアメリカには明確にあったのだろうか。
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