Courtney Pine 「To the Eyes of Creation」(1999)

 ジャズというよりアフリカ風味のリゾートBGMって感じの涼やかさだ。

 アフリカ中央部、あたりを狙いかなあ?文明化されずエキゾティックなアフリカのイメージを滑らかなピアノと野太くはたくようなフュージョン・ドラムで表現した。ベースもフュージョン寄りか。
 まっすぐに響くコートニー・パインのサックスはシンセと馴染み、破綻無く響く。80年代のナベサダを連想した。自らのルーツ見直しよりも、安直にアフリカ音楽のエッセンスを吸収してみせた感あり。

 サウンドはバンドでなく、曲によって様々なミュージシャンを呼び集めた。それがごった煮に輪をかける。演奏そのものはスマートでタイトなため、するすると流れていくが。
 ジャズとは何ぞや、と自らに問いかける盤だ。インタープレイか。アドリブの斬新さか。スイングか。スタイルそのものか。たぶんコートニーは本盤で、あまりややこしいことは考えてない。アフリカ音楽のしたたかな柔軟性と、洒落たフュージョンの混交をシンプルに追及しただけ。
 スキャット、時にはボーカルも入れて豪華ながら躍動感ある世界を描いた。
 インタルード、もしくはサンプリング的にフィールド・レコーディングのフレーズも入れ、そこかしこでアフリカ世界のニュアンスをイメージさせ続けた。
 土のにおいを志向しながら、汚れや泥はそぎ落とし、あくまで洗練さを忘れずに。それが正直、食い足りなくもある。

 サックスのアプローチも曲調に合わせ、フルートやクラリネットも含めて持ち替えた。アドリブは骨太な滑らかさを基調だが、(3)のようにフリーキーに音を軋ませることも厭わない。
 生楽器にもコートニーは拘泥しない。Yamaha WX 7とエレクトリック吹奏楽器も駆使した。シンセののっぺりした太さがサウンドを甘く仕立てる。
 
 ダラー・ブランドが南アフリカのミュージシャンと共演盤のような、のどかでしなやかなムードもそこかしこにある。だが根底は西洋音楽。がっちり固めて揺らぎを許さない。そのへん、厳格だ。

 本盤はコートニーの演奏よりもプロデュース技術が前面に立った。様々な楽器をコートニーは駆使し、豊富なミュージシャンを集める。逆にビッグ・ネームを並べたコケ脅かしでなく、あくまで主役はコートニー。他に目立つ要素を立てない。

 すみずみまでプロデュースされた息苦しさは、むしろ伸び伸び奔放なアフリカ音楽と相反する。もっともコートニーの支配力できっちり綺麗に整えられ、エキゾティックな異文化旅行を、クリーンで安全な環境から覗き見るかのよう。
 現地の息吹ではなく、あくまでフィルターを通したかのように。全13曲、一つの世界を掘り下げず、どんどんと世界は変わっていく。

 生楽器、特にアフリカのパーカッションも多用しながら打ち込みビートで縛り付け、鍵盤のクリックみたいなグルーヴが縛り付けるノリはいただけないが。
 そして(7)。インド風の響きは北アフリカのイスラム文化と流れをぎりぎり繋ぐことが狙いか。アジア以外の音楽文化へ、コートニーは触手を伸ばしていく
 いっぽうでスカタライツの(5)でレゲエと混淆や、ボブ・マーリーの(12)を取り上げたとこが、コートニーの意地かもしれない。生まれたルーツと根本だが異文化の両立を狙うために。

 売れ線を狙いつつ、自らの音楽世界を丁寧に構築したトータル・アルバム。息苦しさを感じる。どこにも無邪気さが無く、強い意志が詰まった。ただし売れ線ってのは、こういうものなのかもしれない。破綻やはみ出しをそぎ落とし、型へきれいにはめ込んでいくものか。

Track listing:
1. The Healing Song
2. Zaire (Interlude)
3. Country Dance
4. Psalm
5. Eastern Standard Time
6. X-Caliber (Interlude)
7. The Meditation Of Contemplation
8. Life Goes Around
9. The Ark Of Mark (Interlude)
10. Children Hold On
11. Cleopatra's Needle
12. Redemption Song
13. The Holy Grail
13a. Kumina
13b. The Mantra
13c. Ojah

Personnel:
Courtney Pine - Woodwinds,per,key、piano (tracks: 4, 5, 8),
Acoustic Guitar – Tony Remi (tracks: 1, 3)
Backing Vocals – Cleveland Watkiss (tracks: 1), Juliet Roberts (tracks: 4), Linda Muriel (tracks: 10)
Bass Guitar – Steve Lewinson (tracks: 12)
Bata [Bata Drum] – Thebi Lipere (tracks: 13)
Cowbell – Mamadi Kamara (tracks: 13)
Double Bass – Gary Crosby (tracks: 5, 13), Wayne Batchelor (tracks: 1, 3, 4, 11)
Drum [Congo Drum] – Mamadi Kamara (tracks: 13)
Drums – Brian Abrahams (tracks: 13), Frank Tontoh (tracks: 4, 10), Mark Mondesir (tracks: 1, 3, 9, 11, 12), Peter Lewinson (tracks: 6, 8)
Flute [Wooden Flute] – Keith Waite (tracks: 13)
Guitar – Cameron Pierre (tracks: 4, 5, 12), Toni Remi (tracks: 11)
Lead Vocals – Juliet Roberts (tracks: 8), Linda Muriel (tracks: 10)
Organ [Hammond B3] – Courtney Pine (tracks: 5), Julian Joseph (tracks: 1, 11)
Percussion – Courtney Pine (tracks: 10), Thomas Dyani (tracks: 1, 3, 8, 11)
Piano – Bheki Mseleku (tracks: 12)
Piano [Acoustic Piano] – Bheki Mseleku (tracks: 13), Julian Joseph (tracks: 3, 11)
Shaker [Shakeres] – Keith Waite* (tracks: 13)
Talking Drum [Tenor Talking Drum] – Thebi Lipere (tracks: 13)
Tambourine – Frank Tontoh (tracks: 4, 10)
Tenor Saxophone – Courtney Pine (tracks: 1, 3, 5, 8, 11, 13)
Trombone – Dennis Rollins (tracks: 5)
Vocals – Mica Paris (tracks: 12)
Voice [Intro Voice] – Lois Farakhan (tracks: 10)
Wood Block – Mamadi Kamara (tracks: 13)



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