TZ 8339:John Zorn "Madrigals"(2016)

 無伴奏の六声女性ハーモニーの組曲を収録した、クラシック音楽の作品。

 ジョン・ゾーンは過去にSapphites名義で女五声アカペラ作品を"Mysterium"(2005)収録の"Frammenti del Sappho"、"Shir Hashirim"(2013)と発表してきた。
 他にゾーンの無伴奏女性ハーモニーはNeue Vocalsolisten Stuttgart名義で"Sacred Visions"(2016)に収録の"The Holy Visions"(2012)がある。
 したがって作曲順では"Madrigals"(2014)が最も新しそうだ。委嘱やゾーン自身のタイミングで、色々と入り組んでる。

 メンバーも上記4作で色々違う。ややこしいので整理は割愛するが。ゾーンの順列組み合わせユニットと同様に、楽想やその際のスケジュールなどで変えていると想像する。

 録音日とライブ演奏を並べると、ちょっとばかしややこしい。
 まずBook Iは14年10月13日に録音。続くBook IIは15年10月10日に吹き込まれた。
 ただしステージ演奏では、Book "II"が、14年11月4日に米ニュー・イングランドにて、演奏の記録あり。Youtubeに2曲の動画が残っている。
 Madrigals Book II IV Queen Mab

Book II-V

 これはボストンのニュー・イングランド音楽院(NEC)にてジョン・ゾーンとアンソニー・コールマンがキュレートしたコンサートの映像。当日のプログラムはよくわからない。 動画の歌う女性たちは、音盤と全く違う。音楽院の生徒かも。曲ごとに立ち位置を変え、それぞれで歌うメンバーも3人違う。なんか慌ただしいな。

 そして15年10月9日にNYで行われたJohn Zorn Festivalの一環で、Madrigals Books I-IIの初演が行われた、とある。するとBook Iが初演で、すなわちIIのほうが先に初演ってことか。
 なおかつこのコンサートの翌日に、前述のとおりBook "II"を録音してる。順番がややこしい。

 楽曲は二組構成で全9曲。スキャットでなく歌詞もあるが、ブックレットは飾り文字でいまいち読めない。
 そもそも表題のマドリガルとはマドリガーレとも言われる、イタリア発祥の歌曲形式。Wikiによれば14~16世紀で二種類の形式が発達し、詩節の朗読や自由詩など様々なアプローチがあるそうだ。
 本盤でも詩を朗読する場面もあり。すなわち正しくマドリガーレの形式にのっとった、実験的だがまじめなアプローチの作品のようだ。

 上記の動画を見たほうがわかりやすいが、低音から超高域まで幅広い音を使って、きれいなハーモニーを味わえる。ファルセットの超高域を操る場面こそ、ゾーンらしいトリッキーで混沌な世界観も漏れるが、全体像は荘厳で美しい。
 歌詞を聞かせるよりもスキャット風に音が飛び交い、和音が広がるさまの美しさを堪能できる。

 個々のメロディよりもハーモニーの響きや、歌唱者の短いフレーズが行き来するスリルに軸足を置いてるかのよう。
 さまざまな手法が次々に現れる、ファイルカード風のアプローチなのか場面展開が目まぐるしく曲構造がパッと頭に入らない。あれよあれよと聴いてるうちに、終わってしまう。

 39分の比較的小品。ファルセットの甲高い響きが気にならなければ、なるべく大きな音で聴くと、すっきり整った歯切れ良い歌唱がもたらす、ふくよかで厳粛な世界観へ静かに浸れる。むやみに前衛や実験技巧に向かわないぶん、素直に聴けた。

Track listing:
Book I
1. Adonais
2. The Witch of Atlas
3. Epipsychidion
4. The Devil’s Walk
5. Endymion
Book II
6. Ocean Nymphs
7. Old Silenus
8. Twilight Phantasms
9. Queen Mab
 
Personnel:
Lisa Bielawa: Voice
Sarah Brailey: Voice
Rachel Calloway: Voice
Mellissa Hughes: Voice
Jane Sheldon: Voice
Kirsten Sollek: Voice

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