TZ 8322:John Zorn "Aguares: The Book Of Angels Volume 23"(2014)

 アルバムごと異なる編成で、第二期Masada316曲の"The Book of Angels"を演奏するシリーズ。第23弾はラテンのバンドが登場した。

 収録曲は他のBook of Angelsシリーズとダブりなし。
 聴き手の許容幅を試すような盤だ。ジャズ、ラテン、クレヅマー。複数の要素が混在し、どれにも寄り添わない。アドリブ中心の構成はジャズ、リズム形式やアレンジ構造は強靭にラテン。しかし音楽性はマサダ、すなわちクレヅマー寄り。うっすらとアラブ音楽な香りもする。
 ストイックにそれぞれの音楽要素へ耳を集中させるか、混ざり具合を楽しむか。聴き手の価値観で本盤の価値は大きく変わる。

 ラテンもクレヅマーに負けず劣らずリズムや楽曲のムードに強力な存在感と個性あり。思いっきり水と油っぽいし、じっさい最初は違和感を覚えた。跳ねるラテンのビートと、揺れるマサダのサウンドは変な居心地悪さある。

 けれども上手い演奏だから、あっという間に耳に楽しく馴染んでしまう。むしろラテンもクレヅマーも異文化のビートで、双方のジャンルに対して知識が足りずむやみな固定観念や強い思い入れが無い分、素直に楽しめてるとも思う。

 しかしコンガが賑やかに鳴り響くビートの中でも、バイオリンが現れたとたん世界が急にクレヅマーっぽく感じるのはなぜだろう。ラテンにバイオリンってあまりぼくの中でイメージ無いせいか。
 
 冒頭曲を筆頭に、主旋律へいかにもなオブリが入るためにラテンぽく聴こえる。むしろアラビックに主旋律をメインのアレンジにすると、いきなり雰囲気が変わる。要はカウンター・メロディの有無がポイントか。

 スピードは本盤で強調していない。むしろ穏やかで優美なイメージのほうが強い。しなやかで強靭なグルーヴは、ドラム一強の明白な拍提示ではない。パーカッション、ピアノ、カウンター・メロディ、それぞれの譜割がアクセントの位置をずらし、複合的なノリでふくよかさを作る。この辺はラテン。
 だが例えば(5)は、そのアレンジ構造を取っていながらも、メロディのせいか淡々とミニマルな伴奏フレーズのせいか、むしろアラビックに聴こえる。本盤を聴いてると、いろんな思いが頭に浮かんで面白い。
 
 本盤リーダーのRoberto Juan Rodriguez(per)は"El Danzon De Moizes"(2002)など、TZADIKから幾枚もリリースあり。
 リーダー作でも、サイドメンでも。昔からジョン・ゾーンとは馴染みみたい。もともと彼はユダヤ系ではないが、音楽ルーツがキューバ系のラテンを土台にして、クレヅマーへも強い興味を持ったらしい。
 
    

 本盤参加メンバーのキャリアを今一つ追えていないが、リーダーのロベルト・ジュアン・ロドリゲスのバンド仲間じゃなく、本盤のために集められたセッションかもしれない。
 ピアノが二人って変な編成で、cl,acc,tb,vln/va,bにperがロドリゲスも入れて3人、合計9人編成のアンサンブル。もっともピアノ2台の厚みはあまりピンとこなかった。曲ごとにピアニストが違うってこと?
 全体像は和音の厚みよりも、メロディ楽器がユニゾンしリズムが交錯で太さを出す感じ。

 ソロとアンサンブルの構図が基本ながら、イスラム音楽っぽくユニゾン気味にメロディが紡がれるアプローチが多い印象だ。
 そしてリズムは強靭に鳴り続ける。ラテンが中心だけど、だんだんアラビックなムードにも聴こえてくるな。この印象の揺らぎが、本盤の楽しみ。そしてそれぞれの音楽ジャンルに詳しくなったとき、また違う印象を持つと思う。

 泥臭さは皆無。非常に洗練され、丁寧で隙の無い演奏だ。

Track listing:
1.Ananel
2.Orifiel
3.Ophaniel
4.Kidumiel
5.Nelchael
6.Psachar
7.Egrumiel
8.Zahabriel
9.Naamah

Personnel:
Accordion, Flute - Salit Lahav
Clarinet - Gilad Harel
Congas, Percussion [Chekere] - Chen “Pepe” Meir
Double Bass, Electric Bass - Assaf Hakimi
Drums, Percussion - Roberto Juan Rodriguez
Frame Drum, Percussion [Dohola, Doumbek, Darbuka] - Amit Sharon
Piano - Itay Abramovitz, Omri Mor
Trombone - Yaron Ouzana
Viola, Violin - Jonathan Keren


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