TZ 8338:John Zorn "Cerberus: The Book of Angels Volume 26"(2015)

 どのアルバムも異なる編成で、第二期Masada"The Book of Angels"の316曲を解釈するシリーズ。第26弾はタイトなビッグバンドがマサダの曲へ新たな魅力を加えた。

 18人編成の本盤はThe SPIKE Orchestraの登場。Youtubeに本盤の予告編があった。黒バックに文字と写真1枚の素材だが、しっかりカッコいい仕上がりだ。


 このアンサンブルはSam EastmondとNikki Franklinの仕切り。過去に1枚、アルバムをリリースしてる。


 本盤の10曲中、過去に披露は本シリーズVol.21収録の(2)のみ。あとはすべて新曲を取り上げた。だが隅々まで細かくアレンジされ、アドリブ要素をかなり除いた演奏がキッチリした魅力を表した。
 Masadaは本家ジョン・ゾーンのマサダを引き合いに出すまでもなく、数行のテーマを元に自由に解釈する余裕と懐の深さが特徴だった。融通無碍、どんなアレンジや編成でも受け止める。

 しかし本盤は隙が無い。もちろんアドリブ要素はソロで披露される。だが全体のアンサンブルは構築され、しかも上手い。知らないメンバーぞろいだが、きっちり縦線を合わせてピッチが整ってる。簡単そうに見えて、すごく難しいことをたやすくこなした。すごいな、このバンドは。

 機械かってくらいシビアな演奏を平然と決めつつ、グルーヴさを逃さない。リズムが消えフリー気味な場面でもジャストなビートを常に感じる。
 最初に聴いたときは、ラテンやディキシー、スイングの要素をちらと感じた。エリントンのロマンティシズムも。けれど繰り返し聴いてるうちに、どれとも離れてると痛感する。
 
 形式や影響をするっと飛び越え、独特な空気を漂わす。雑駁でいて整然、鋭利にしてしぶとい。マサダのスピーディなノリは、大編成アンサンブルが醸し出す分厚さで、むしろ重厚さに傾いた。だが鈍重ではない。アレンジも凝ってる。複数のラインが並行に走り、微妙に絡み合う。

 ソロイストも次々立て、目まぐるしく場面を変えつつもオーケストラならではのリフ連発な鮮やかさも、頻繁に繰り出す。すごい。
 Voiceってのは(10)で聴けるファルセット気味なスキャットのことか。

 録音やミックスは本盤でトロンボーンも吹いてるBen Greenslade-Stanton。オケの中でエンジニアまでカバーできる自給自足ぶりが、この見事な全員参加の演奏っぷりを魅せるのかも。

 アルバムを通して主役めいたソリストがいない。バンド全体が一つの有機体として、しぶとくしたたかに演奏を繰り広げた。
 聴き終わって、だれか個人が気にならずサウンドそのものの完成度にしびれる。何が起こるかわからない危うさは皆無だ。きっちりとアレンジで音楽は締め付けられている。
 けれども堅苦しさや、機械っぽい寂しさもない。

 ぱっと検索した限りでは、ライブ映像が見当たらない。どんな活動をしてるんだろう。 彼らのWebにある本盤収録写真見ても、それなりに年輪を重ねたメンバーっぽいし、ライブの予定も記載無い。普段は個人プレー集団の疑似的なオーケストラか?
http://www.spikeorchestra.com/#!gallery/cqju
 Facebook見ると、今も活動してるっぽいのだが。
https://www.facebook.com/TheSpikeOrchestra/

 くるくると変わるアレンジ、一糸乱れぬアンサンブル、ソロとリフのバランス。どれもこれも素晴らしい。聴くほどに、上手さと凄さに唸る。

Track listing:
1. Gehegial
2. Hakha
3. Hananiel
4. Lahal
5. Armasa
6. Thronus
7. Shinial
8. Donel
9. Raguel
10. Pahadron

Personnel:
Trombone, Producer, Recorded By, Mixed By - Ben Greenslade-Stanton
Solo Trumpet, Producer, Arranged By Sam Eastmond
Voice,Arranged By Nikki Franklin

Paul Booth: Tenor Sax, Clarinet
Erica Clarke: Baritone Sax, Bass Clarinet
Stewart Curtis: Tenor Sax, Clarinet
Moss Freed: Guitar
Mike Guy: Accordion
George Hogg: Trumpet, Flugelhorn
Noel Langley: Trumpet, Flugelhorn
Sam Leak: Piano, Keyboards
Chris Nickolls: Drums
Dave Powell: Tuba
Ashley Slater: Trombone
Karen Straw: Trumpet, Flugelhorn
Mike Wilkins: Alto Sax, Clarinet
Otto Willberg: Bass
Vasilis Xenopoulos: Alto Sax, Flute


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