Warehouse 「Endless game of Cat and Mouse」(2002)

 コンパクトで愛らしいサウンドを奏でるユニットの1st。

 ギター、ベース、ビブラフォンと変則トリオだが、母体がボンデージ・フルーツなため。本バンドのリーダー、鬼怒無月が率いる5人組プログレ・バンド、ボンフルからROVO組(勝井祐二と岡部洋一)以外の三人で結成された。
 
 こじんまりしたアンサンブルで、ほのかなユーモアが漂うバンドだ。本盤1枚で活動は終わらせず、アルバムはあと2枚発表あり。頻繁ではないが、今でもたまにライブを行っている。
 当時の帯のアオリ文句は「ソフト サイケデリック ミュージック カフェへようこそ」。実際、レコ発ではカフェ併設の本屋でライブもやった。当時のライブ感想はこちら

 演奏にはメイン楽器の他に小物もいろいろ使っており、リコーダーやカズーを用いて穏やかで夢見心地な音世界を作る。(1)や(8)でのペットボトルの口を吹く実験的だが音色の妙味を楽しむアプローチも楽しかった。
 (7)でのチューブ・ドラムは音色も格別。のちに僕はブルーマンの公演で同じ楽器を使ってるの見て、すぐにこのバンドを連想したっけ。
 ハードで深いインプロを繰り広げたボンフルとメンバーに共通性ありながら、ウエアハウスは全く違う音楽性なのが面白いところ。
 
 収録曲は鬼怒だけでなく、他メンバーの作品もバランスよく収録した。具体的には鬼怒が2,3,9,10,12,13, 高良が1,4,5,8, 大坪が6,7,11,14,15。主だった曲は鬼怒の楽曲だが、本バンドの色あいやアルバムのイメージを作る曲は高良や大坪の曲だ。
 つまり三人の個性がおっとりと集まって本盤はできている。

 アルバムではさほど即興要素を前面に出してない。なにせ15曲も詰め込んだから。しかし、曲によっては見事なギター・ソロなども味わえる。
 しっかりした演奏技術と強固なアンサンブル、寛ぎとキュートな楽曲、特にライブで炸裂する穏やかなユーモア。さまざまな要素が集まり、コンパクトで深い音楽を楽しめるのがWarehouseの魅力だ。ライブではもっと即興要素も強かった。

 本盤そのものはブレイクでシンセを入れる(9)など、スタジオ録音ならではの工夫もあちこちにあり、一発録音にはこだわらず作りこんだ。
 いっぽうで(10)のようにタイトでスリリングなアンサンブルを楽しめる曲も、同時に収録してるバランスの良さがさすが。

 とにかくこの盤は異色だった。鬼怒無月のイメージからも、ジャンルを軽々と横断した無国籍さと無邪気な実験性が同居するさまが。(11)のようにノイズもアンサンブルへ吸収し、なおかつ可愛らしく仕上げるセンスは素晴らしい。
 すごく聴きやすい一方で、技巧とアイディアと実験精神がしなやかに同居してる稀有な盤だ。
 ウエハハウス自身としても2ndでは演奏へ重心を置き、3rdは元たまの柳原陽一郎と共演し歌ものに力を入れたため、どちらも本作ほどの楽曲表現へ無邪気に心を配った小粋さはと違う方向性になった。本盤だけが、独特の世界を築いている。

 鬼怒たちメンバーにとって活動の主軸にするバンドではないと思う。それでも折に触れ、ずっと続けて欲しい。

  

 ライブ映像も貼っておこう。本盤当時の映像は見つからず。これは2010年8/19に祐天寺FJ'Sの演奏より。


Track listing:
1. Fuh
2. Cat box
3. Ezumi
4. Good night honey
5. MUGI no march
6. Cazoo suite#5
7. Bunbake
8. Fuhi Fuhi
9. Liquid Bounty
10. Mad Cafe
11. 8/28
12. Dog and Pepper
13. Tonekey
14. Endless game of cat and mouse
15. Mana’s roux

Personnel;
鬼怒無月:guitar,banjo,ukulele,synthsizer,organ,recorder,cazoo,voice,bottle,junk
高良久美子:vibraphone,marimba,bass marimba,percussion,synthsizer,organ,recorder,cazoo,voice
大坪寛彦:bass,vo on 14,voice,ukulele,recorder,cazoo,voice

Techi:Vo on 14
Nishi Yuko:Voice on 4,Cup & Sigh on 11
Suzuki Fumie:Magazine & Sigh
Iguchi Ayako:Pen & Sign on 11

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