クリントンの現代性

ファンカデリック名義の新譜な3枚組"First Ya Gotta Shake The Gate"(2014)を聴いている。予想以上に面白い。ジョージ・クリントン(73歳)は、過去の遺産に安住せずにいまだ新作をぶつけてくる。楽隠居とか無いのか。

数年前に聴いたライブはエンターテイメントに徹し、過去のファンを失望させぬヒット曲集だった。今年も来日するようだが、値段的にもいまいち食指が動かない。動いてるのを確認しに1セットのライブへ1万5千円って、ちょっとなあ・・・。値段設定からしてツアー・ビジネスのターゲットって、若者狙いと思えない。

だがアルバムは違う。"First Ya Gotta Shake The Gate"では、まだ現代の黒人音楽へジョージは色気があるようだ。クールに抑えつつ、打ち込みビートに生演奏をまぶすサウンドは、まだじっくり聴けて無いが、なんだか歳相応のしぶといファンクっぷりを感じた。

ノスタルジーでも、若者に媚びでもない。今の黒人音楽を咀嚼しつつ、自分のフィルターを通して放出する創作力がサウンドから滲む。むやみにフロアで踊らせようとせず、しかしダンサブルさは強靭に残す。じっくり聴くほどに本盤は、いろいろ気づきがありそうだ。

思えばジョージは貪欲に時代と融合してきた。それがJBやEW&Fやスライ(本盤、7曲に参加)と異なる。もっといえば、ブーツィとも。
80年代初期でトーンダウンしたが(訴訟対応らしい)、そのあともプリンスとがっぷりビジネス的にタッグを組み、プリンスと言う80年代を代表するファンクの象徴をあっさり通り抜けた。

さらにヒップホップへも親和性高いアルバムを、すんなりと仕上げる。プリンスすらもラップはぎこちなかったのに。
そのうえ生演奏のダイナミズムがP-Funkの強烈な魅力だが、一方で打ち込みビートも滑らかに吸収する。このバランス感覚、すなわち柔軟な適応力と奔放さがジョージの強力な武器と思う。

そして新作"First Ya Gotta Shake The Gate"。クレジットや録音場所が多岐にわたることから、あちこちで長年行った録音の集大成だろうか。歌詞が分かればなあ。なにか一気通貫のコンセプトあるのかもしれない。
このブログ見てると、P-Funkは歌詞も色々と時代性を帯びてて興味深い。なおこのブログ、訳詞が滑らかで素晴らしい。

本作は時代の最先端を狙わない。そもそも70歳を超えて時代の最先端行かれても困る。若い者の立場が無い。
ではなくて、歳を重ねた等身大のサウンドを現代風に仕上げた。甘さや派手さより、渋くしたたかに。
正直、最初に聴いたらピンとこなかった。地味だし。70年代のP-Funk聴けばいいや、と思った。瑞々しいパワーを聴くのは選択肢としてポピュラー音楽の意味合いから間違ってない。つまりエンターテイメント、の観点で。

だが本作はエンターテイメントと別次元の観点で、なんか気になる。アグレッシブな勢いとは別の、ぶっとく重たい魅力が本盤から滲む。うーん・・・上手いこと、言語化できない。もう少し、聴き重ねてみよう。

おまけ。
ジョージはP-Funkでデビュー前、ドゥワップなどのシングルを何枚か出していた。
ふとYoutube検索すると・・・恐るべし、ほぼすべてが聴ける。音質気にしなければ、レア盤とか今はあんまり関係ないんだな。

以下、発表順にP-Funkデビュー前まで並べてみた。
当然、これらのサウンドにP-Funkを求めてはいけない。

Personnel :
George Clinton (Lead)
Ray Davis
Fuzzy Haskins
Calvin Simon
Grady Thomas

1958:Poor Willie/Party Boys (APT 45-25036)
(A/B面メドレー)

1959:Lonely Island/You Make Me Wanna Cry (Flipp Records FL-45-100)
(A/B面メドレー)

1963:I'll Get You Yet / You're Cute (Symbol 917)
A面;Youtube なし

1963:You're Not Hurting Him (You're Hurting Me)(Jobete 片面アセテートのみ?)
Youtube なし

1966:Heart Trouble/That Was My Girl (Golden World GW-46)

本盤以降はレヴィロットからリリース。P-Funk前夜、だ。

1967: (I Wanna) Testify/I Can Feel The Ice Melting(Revilot RV-207)

A面は"Up for the Down Stroke"(1974)でセルフカバー。パーラメントのバージョンはこれ。

1967:All Your Goodies Are Gone (The Loser's Seat) 
      / Don't Be Sore At Me (RV 211)
1968:Good Old Music / Time (RV 223)

A面は"Funkadelic"(1970)でセルフカバー。ファンカデリックのバージョンはこれ。

1968:A New Day Begins / I'll Wait (RV 228)

1968:Little Man / The Goose (That Laid The Golden Egg) (RV 214)

1968:Look At What I Almost Missed / What You Been Growing (RV 217)

本シングル盤のみ、ひょこっとSoultownからリリースされてる。理由はよくわからない。A面とB面は、それぞれ67年のレヴィロット盤とバージョン違いなのだろうか。
A/B面ともYoutubeに見当たらず。
1969:(I Wanna) Testify / All Your Goodies Are Gone (The Loser's Seat) (502)

Mose Allison廉価盤4種。

「安い」と飛びつくのは、さもしい。しかし「どれが一番お得か」と比較してしまうのも確か。
Amazon検索してたらモーズ・アリソンの廉価盤が各社から出てた。非常にややこしいので整理してみる。なお、ぼくは"Back Country Suite"(1957)を聴いた程度の知識しかない。
つまり、ダブりをほとんど気にしなくていい。廉価盤でどさっと買うには最適なミュージシャンだ。

なお発売日と値段は本日付のAmazonの新品価格。【】がLP1枚当たりの値段。なんかスーパーの値段表示みたいだが。

先に結論を書こう。2)か3)か4)。・・・結論になってねえ。
1)は外せる。たぶん。リマスターとか、音質的なメリットあったら別だが。

・・・ぜんぜん絞り切れてねえ。

なぜか。盤によって微妙に一長一短あり。値段を選ぶか、バラエティさを取るか。一つ言えるのは、どれか一枚買ったら残りをさらに廉価盤で買い足すのは愚の骨頂。ダブり増やしても何の意味もない。

するとオリジナル形式のCDをチミチミ買った方がいいって選択肢もある。
どっさり買っても、聴かなかったら意味ないし。

さあ、以下のどれを選びましょうかね?

1)Complete Prestige (2014/11/25)Fresh Sound 4,675円【779円】CD3枚組

 プレスティッジの以下LP6枚を収録した。ある意味王道路線だが、音質にメリット無ければ外せるコンピだ。

 1957 : Back Country Suite (Prestige 7091)
 1957 : Local Color (Prestige 7121)
 1958 : Young Man Mose (Prestige 7137)
 1958 : Ramblin' with Mose (Prestige 7215)
 1958 : Creek Bank (Prestige 7152)
 1959 : Autumn Song (Prestige 7189)

2)Complete Recordings: 1957-1962 (2015/3/10) Enlightenment 2,344円【213円】CD5枚組

 1)収録の6枚に加え、以下の5枚と、
1959 : Transfiguration of Hiram Brown (Columbia)
1960 : I Love the Life I Live (Columbia)
1961 : Takes to the Hills (Epic)
1962 : I Don't Worry About a Thing (Atlantic)
1962 : Swingin' Machine (Atlantic)

 この英Esquireの4曲EP盤をジャケットから類推するに、収録のようだ。
1960 : One Room Country Shack (Esquire)

3)Collection 1956-62 (2015/1/13) Acrobat 2,286円【?円】CD4枚組

 良くわからんコンピ。アルバム全曲を収録でもなさそうだ。
 "Back Country Suite"~"I Don't Worry About a Thing"の時期ながら、Zoot Sims や Al Cohnのアルバムに参加した音源も収録してるっぽい。LP何枚分か、換算できない。

4)7 Classic Albums  (2014/9/16) Real Gone Jazz 1,285円【183円】CD4枚組

 お馴染みRGJ盤。以下LP 7枚を収録して、コスパは最も良い。時に盤起こしレベルと、音質の悪さに定評あり。安かろう、悪かろう・・・?

 1957 : Back Country Suite (Prestige 7091)
 1957 : Local Color (Prestige 7121)
 1958 : Young Man Mose (Prestige 7137)
 1958 : Ramblin' with Mose (Prestige 7215)
 1958 : Creek Bank (Prestige 7152)
 1959 : Autumn Song (Prestige 7189)
 1960 : I Love the Life I Live (Columbia)

N.D.E.

棚に聴いてないCDもあるのだが、ここ何日かは「前に聴いた盤を聴きかえす」のに興味あり。
ということで今のBGMは細野晴臣"N.D.E."(1995)。パイオニアのレーザーアクティブ用ソフトに書かれた曲("Goku"のこと?)を、ゴウ・ホトダ、寺田康彦、ビル・ラズウェルがリミックスしたもの。詳しいクレジットはこちらを参照ください。

アンビエントと語られることが多い盤だが、数曲ではビート効いたミニマル・テクノもあり。リミックスゆえかダブ風の効果を感じる。アルバムを通じて、リズムへのこだわりが楽しい。
サウンドの基調は無国籍の民族音楽。エスニックの要素をふんだんに感じるが、いったん細野のフィルターが通ってる。さらに本盤はリミキサーの解釈も入るため、複雑な変貌が施された。

今のBGMが(2)。かっこいいんだな。途中でピアノがダブ風に絡む場面が特にグッとくる。
Bill Laswellのリミックス。あんまビルの作品でピンときたことないが、これは素晴らしい。降り注ぐようなリズムの奔流が幾重にも吹きすさび、清水靖晃のサックスが金属質に、いななく。

ひとしきりアッパーに盛り上がったあとで、滑らかにチルの(3)にいく流れも良い。

この盤は細野のソロと言うより企画盤のイメージが強い。あんまり気を入れて聴く盤じゃなく、フロア向けかもしれないが・・・たまに聴いている。浮かんでは消える音構造が絶妙な構成で、たんなるDJミックスとは一味違う妙味を感じる。

リイシューあれこれ

タワレコのリイシューページを見てたら、面白そうなのが色々。

マヌ・ディバンゴ "アフロヴィジョン"(1976)CD化がまず嬉しい。一曲はLP収録のロング・バージョン収録と言う希少性も。こんなテイク残ってたんだ。

日本ジャズの〈Dig Deep Columbia〉もラインナップが興味深い。
(1)山下洋輔『ライヴ&ゼン…ピカソ +5』<初CD化>
(2)山下洋輔『イン・ヨーロッパ 1983 - complete edition -』
(3)ベニー・ウォレス with 山下洋輔『P.S. アイ・ラヴ・ユー +1』
(4)坂田明『ポチ』<初CD化?>
(5)原田依幸『ミュー』<初CD化>

(1)~(3)は未発表テイク付の付加価値が嬉しい。(5)は翠川敬基も参加。一枚2500円くらいと、高めの価格設定がうーん、だが。イニシャルで廃盤になるとしたら買った方がいいよなあ。

独enjaのストレート・リイシュー廉価盤シリーズ第四弾も。

アブドゥール・イブラヒムの"ミンディフ"(1986)が悔しい。こないだ買ったばっか。
enjaは80年代のレココレ誌で片っ端からレビューしてて玉石混交のイメージあるが、ときどき妙に絶賛されてたんだよな。今回も聴いたことない盤ばかりだが、一枚千円か・・・。

イースト・ウィンド40周年記念のリマスター廉価盤も一枚千円。
ダラー・ブランドの"アフリカン・ブリーズ"(1974)は聴いたことない。日本のライブ盤なんだ。菊地雅章と日野皓正の東風"ウィッシズ"(1976)も興味あるな。

フュージョンは仮想敵みたいに聴かないで来たが、この歳になると一回りして聴いて見たくなることも。ボブ・ジェームス主宰のTappan Zee盤が一枚千円でリイシュー。
スティーヴ・ガッドを手がかりに(他にも山ほど参加してるだろうが)、スタッフがらみのリチャード・ティー1stソロ"ストローキン"(1979)や"ナチュラル・イングリーディエンツ"(1980)辺りは聴いて見たいかな。

クラシックの頁もツラツラ見てたら、マリー=クレール・アラン(org)の22枚組ボックスってのが廉価盤で面白そうだ。バッハだけでもおなか一杯のオルガン曲、いろんな作曲家を集めたこのコンピって楽しめるかも。

ミケランジェリ

クラシックの素養ないもので、初めて知った。たまたま菊地成孔と大谷能生による水曜Wantedのログをニコニコで聴いてたら、かかった。聴いてて、ビックリ。凄く冷徹で綺麗なピアノのタッチだ。

この06年3月22日放送、3:16あたり。「4つのバラードOp.10」がかかる。しかしこの放送、もう10年近く前か・・・。

ミケランジェリの盤をAmazonで調べてたが、グラモフォンの「子供の領分」盤はLPでジャケット見たことあるな。聴いたことなかったけど。

Amazonで廉価盤ボックスが何枚か出てるが、ピンとくるのが無い。週末にユニオン行って、棚を見てこようかな。
ミケランジェリの経歴を知らずWikiで調べたら、ブゾーニにも興味出た。

どうせだったら"調性の無い"って前衛曲を聴いて見たい。「ソナチネ第2番」でいいのかな。

これがブゾーニ自身の演奏だろうか。
いやはや、試聴が簡単な時代だ。昔は、とりあえず盤を買わないと聴けなかったのに。