CDまとめ買いオク・キーワード

ヤフオクにディスクユニオンがCDまとめバーゲン発売を以前からしている。福袋とか闇鍋感覚で、なんかこの手の企画が気になる。
他にないか、とキーワードをいろいろ工夫して、ようやく良さそうなワードが「CD 枚セット」。これを音楽カテゴリでやると・・・まあ、出てくるわ出てくるわ。時々見て、楽しんでる。

セドリの余りをたたき売りから始まって、さまざまなジャンルから同様の"まとめ販売"商品有り。
音楽の質以前に、CD製品そのものの質や状況が分かんないって問題ある。
実はこないだユニオン出品を一件落したら、強烈に煙草のヤニ臭い盤が有って辟易した。除菌タオルの箱まで買っちまったが、それでも何ともならん。

安物買いの銭失いかもしれない。だが掘り出し物探しを味わえる。と、正当化してみる。
どうせ玉石混交なら枚数多いほうがいい。3枚より30枚セットの方に惹かれる。というか、50枚以下には惹かれない。どどんと届いたほうが気持ちいい。

とはいえ今、某氏が出してる700枚セットだと落とす気がしない・・・好みと違う盤が過半数っぽい香りがぷんぷんするし。
仮に700枚を2万円で落としたとして、10枚くらい当たり見つかれば元は取れたと言えるが。難しいもんだ。

ジャージー・ボーイズ

クリント・イーストウッド監督、フォーシーズンズの歴史を元にした映画を見てきた。面白かった。05年開幕のミュージカルを下敷きに映画化か。
フォーシーズンズのヒット曲がバンバン流れ、小気味よいテンポでストーリーが進む。フォーシーズンズをちょっと知ってる人に、お薦め。
映画館を出るとき「良い曲だ、CD欲しくなった」と言ってる観客がいたが、まさにそんな人に向けた作品だと思う。

オールディーズ・マニアだと突っ込みどころは満載。フォーシーズンズのファンにも苛立つ点が多い。だが映画は楽しめる皮肉な作品だ。なにせ、曲に罪は無い。

おまけにこの映画、エグゼクティブ・プロデューサーにフランキー・ヴァリとボブ・ゴーディオが名を連ねてるとこが、よけい始末に負えない。要するに主要メンバーによる公式映画っぽい仕立てながら、実に大人げない登場人物やシナリオ設定になっている。
とはいえ主活動の性質上、これまでのロック評論分野で語られにくいフォーシーズンズなだけに、この映画を踏まえて彼らの認知度アップを願ってやまない。

ビーチ・ボーイズは"ペット・サウンズ"の奇妙な持ち上げられ方を足掛かりに、伝説として大きくクローズアップされた。でもフォーシーズンズはいまだに「"シェリー"のグループね」、って扱いがあまりに惜しいから。

とはいえ映画は胸熱の場面がいっぱい。「ヴァリのスペルをYでなくiにしたら」ってアドバイスのセンスや、イタリア系文化の価値判断が新鮮で興味深かった。
音楽の場面も、教会での"A Sunday kind of love"や、ボブ・ゴーディオのオーディション・シーンな"Cry for you"、クライマックスの"Can't take my eyes of you"など目白押し。エンディング・クレジットのミュージカル風シーンも良かったな。
どれも、時代設定はめちゃくちゃだが。

登場人物設定はヴァリが「友情に熱い天才シンガー」、ゴーディオが「才能あふれる実直な作曲家」と描かれ、さすが金出しただけある持ち上げられっぷり。
(なおボブ・ゴーディオはつい先月、9/11に他界。知らなかった)
逆にトミー・デヴィートは「金にルーズな変人リーダー」、ニック・マッシは「役立たずのオマケ」と扱われる。ボブ・クリューは「オカマの敏腕プロデューサー」。

チャーリー・カレロに至っては「ちょっと腕のあるドサまわり用コーラス」として、名前と登場が1回づつあるだけ。
それはないだろう、おい。

映画の演奏曲は、英語のWikiにまとめられていた。これは便利だ。
作品時期はVee Jayからフィリップスの初期とカーヴ時代を中心、モータウン時代はごっそりカットで残念。

ということで、ヲタクなツッコミを少々。あのストーリーが正しいなんて、絶対に思ってほしくない。ただしメンバーが若いころの逮捕歴はホントらしい。

フォーシーズンズはヴァリ、ゴーディオに加え、クリューとチャーリー・カレロ、この4人による才能が集まってこその、サウンドだ。映画のカレロの扱いは、あまりにひどい。他の歴代フォーシーズンズ・メンバーも丸無視とはねぇ。

映画の冒頭は、52年くらいの設定だった。
だが最初のほうのシーンから。素人なヴァリがクラブでトミーに誘われ飛び入りで歌う前、バンドがちょっと演奏してたフォー・ラヴァーズの"You're the Apple of My Eye"。これは既にかれらがデビュー後、全米62位だかの中ヒット曲。1956年、ヴァリが22歳のとき。

ヴァリが泥棒の見張り役で歌った"Silhouettes"はThe Raysの57年の曲。作曲はボブ・クリュー。これは、スタッフのシャレかな。

ゴーディオを抜擢の引き合いに上がったタモリ倶楽部の"Short Shorts"も57年の曲。
クリューのオーディションで演奏の"Cry For Me"はCholli Mayeのためにゴーディオと『ヴァリの』作品。しかしこの曲、知らなくて新鮮だった。ヴァリは66年にシングルB面でカバーしてる。

The Angelsの"My Boyfriend's Back"(1963)のシーンは妙な色気と、間抜けなハンド・ダンスのギャップが凄まじくギャグ。あれは笑っていいのやら。

ついでにビッグ・ヒットの"Sherry"は62年。ヴァリが28歳のとき。つまりけっこう下積みが長かった。なお"Big Girls Don't Cry"創作のきっかけが、ロナルド・レーガン大統領が出演の映画"Tennessee's Partner"(1955)を見てってのは、本当らしい。
"Can't Take My Eyes Off You"は67年の曲。借金返しにヴァリがドサまわりを続け、ついにこの曲を歌った、って時間感は、映画でも上手く表現されてたな、そういえば。

ヴァリは確かに売り上げの浮き沈みも含めて、苦労人だと思う。歌の才能とは裏腹に。過去を美化したい脂っこさは、別に否定しない。どうせだったらフォーシーズンズの名前を一切出さず、"ジャージー・ボーイズ"って架空のバンド設定で、あの物語を描いて欲しかったけれど。

とはいえ、映画は面白かったよ。最後にもう一度強調します。いや、ほんとに。
50~60年代のセピア色な風景で、派手で大量消費の大人文化で、煙草ブカブカふかしまくりで、妙に豪華な世界観は、殺伐さが欠片も無くて良かった。

しかしステージ描写は大人向けのクラブやレストランでのシーンばかり。あそこが、リアルタイムで無いぼくには、リアリティが判然としない。ティーン向けとは違ったのかな。
十代はラジオだけ、実際のライブ・ツアーは大人向けレストランって区分けが、当時のアメリカには明確にあったのだろうか。

Princeの新譜2枚。

まず告白する。プリンスは大好きだが、なぜか発売直後は良さが分からない。
常に数作前の作品がベストに思える感じが、かれこれ20年間続いてる。つまり何年も聴き続けないと、しみじみ自分の中に沁みてこない。情けない話だが。
今、ようやく「"Lotusflow3r"(2009)が良いなー」と思ってるしまつ。

プリンスを知ったのは"Purple Rain"(1984)がリアルタイム。以降、"Lovesexy"(1988)までは先駆性のまま夢中で惹かれた。一枚選ぶなら、依然として"Lovesexy"。
だが"Batman"(1989)のポップさに躓いた。「なんか違う」と毎年のアルバムを聴きながら、時間が立った。

でも96年くらいかな。出張がえりの飛行機、機内放送で"Diamonds and Pearls"(1991)がムチャクチャ胸に来た。夜の着陸寸前、街明りにプリンスの美しい曲がきれいにハマった。
そこから数年、"The Rainbow Children"(2001)でようやくプリンスの良さが分かったのかもしれない。一応すべてのフィジカル・リリースはリアルタイムで聴いてきた。
でも旧譜を聴きかえし「ああ、ここが良いのか」と再確認を続けて、新譜を後追いで味わうという逆説的な日々が続いている。

前置きが長くなった。今回、プリンスが2枚のアルバムを同時発売した。
"The Gold Experience"(1995)年から19年ぶりにワーナーとディストリビュート契約を任せるかたちで。

膨大な録音と旺盛な創作力を誇るプリンスだが、アルバムは"20ten"(2010)以来と間が空いてる。よっぽどレコード会社に中間搾取されるのが嫌みたい。2億とも言われるギャラでライブを活発に行い(http://amass.jp/41240)、ダウンロード販売を模索してたのがここ数年。

今回の収録曲を見ると、試行錯誤の過程が伺える。ざっと整理してみた。
まずPrince名義の"Art official age"。13トラック中、宣伝兼ねた事前発表曲も併せ、4曲が収録された。
(事前発表曲)
"Breakfast Can Wait"(2013/10)
"Breakdown" (2014/4)
"Clouds"(2014/8)
"U KNOW"(2014/9)

今回のアルバムに漏れたのが、以下の5曲。1曲をのぞき、DL形式で発表された。
(未収録曲)
"Dance 4 Me"(2009)
"Extraloveable"(2011)
"Rock and Roll Love Affair"(2012)★実リリース有り
"Screwdriver"(2013/1)
"Fallinlove2nite"(2014/3)

一方のPrince & 3RDEYE GIRL"PLECTRUMELECTRUM"は12曲が収録。事前発表は3曲。1曲が未収録となった。
(事前発表曲)
"Fixurlifeup" (2013/5)
"Pretzelbodylogic"(2014/2)
"WHITECAPS"(2014/9)

<未収録曲>
"Live Out Loud"(2013/2)

今回の2枚のアルバム発売の発表は8月末だから、ずいぶん唐突な感じある。しかしプリンスは着実に活動は披露し続けてきた。

20Tenツアーを2010年に行った後、"Welcome 2"ツアーを2010~12年に断続的にリリース、13年は年初に3RDEYE GIRLを発表し、"Live Out Loud Tour"を3rdeyegirlと行った。これがYoutubeなどで映像がポロポロと発表される。

すなわち"20Ten"(2010)以降、DLや映像で断片情報を漏らして渇望を煽る、丁寧なプロモーションを行った。一方のツアーで収益確保のビジネス・モデルだろう。
プリンス(か、周辺スタッフ)の成果が、満を持しての今回のリリースと思う。

アメリカの状況や、今の若者全体のメンタリティは良くわからない。だがぼくの歳だとどうしても「アルバム発表が活動の象徴」ってイメージが拭えない。
どんなにライブやDLやっていようとも、65年以降のロック産業が築いた「アルバムが活動の一里塚」って宣伝戦略から脱却できない。

プリンスの録音は時代ごとに明確な変換を感じる。
デビューからしばらく録音はドライさとエコー感のバランスを模索、いずれにせよアナログ的な野太い響きを上手いことテープに封じ込めてきた。
だが"Batman" (1989)から"Love Symbol"(1992)まで上滑る。妙なデジタルでカチカチなマスタリングが続いた。

"Come"(1994)あたりから卓までプリンスが押さえ、緻密さが増してる気がする。
"Rave Un2 the Joy Fantastic"(1999)の豪華な宅録の空気感で一瞬模索したが、"The Rainbow Children"(2001)から再び太い音を意識と思う。
特にここ数作での、楽器の分離と溶かし込みを探る音像作りも聴きどころだ。

というわけで、ようやくプリンスの新譜2枚を聴いた。
"Art official age"はスタジオ作業を丁寧に施した密室的な作品で、"PLECTRUMELECTRUM"がキャッチーなファンクを集めた印象あり。聴きこむうちに、またぼくの評価は変わるはず。何年後か知らんが。

聴くたびに評価が変わるミュージシャンの活動を、同時代で味わえるのは幸せなことだ。