The Blues And The Abstract Truth

Truthはどう掛かるのか。「ブルーズ、そして抽象の真実」か、「ブルーズ及び抽象、双方の真実か。
前はざらっと聴き流したかな、と改めて今夜、オリバー・ネルソンの本盤を聴いている。ちなみに邦題は「ブルーズの真実」。Abstractはどこ行った。

エリントンのセッションに参加したオリバーは「譜面が間違ってる」と困惑。「そのまま吹くんだ」とジョニー・ホッジスがアドバイスしたエピソードを読んだことある。そして本盤でオリバーは、変な響きだが気持ちいいアンサンブルをたっぷり披露した。

ホーンの和音が気持ちよくても、妙にベースの響きが座りわるい。もぞもぞっと耳の落としどころを探してる間に、すいすいと曲は進んでいく。
本盤のベースはポール・チェンバーズ。だがほとんどオリバーのアレンジじゃなかろうか。

参加メンバーは以下の通り。コンボ編成が拡大され、ぐっとゴージャスな管の響きが心地よい。
Oliver Nelson(as,ts),Eric Dolphy(fl,as),George Barrow(bs),Freddie Hubbard(tp)
Bill Evans(p),Paul Chambers(b),Roy Haynes(ds)

今日の気分は"Hoe-down"。テーマの対話が楽しい。左のドルフィーとフレディ、右のオリバーとジョージ。左右チャンネルで掛け合うテーマは、二管づつなのに分厚くて、軽やかだ。
トランペットが駈ける後ろのベースって、普通のコード展開だろうか。なんか上ずる。ドルフィーがさらにズラして、よけい耳のすわりが混乱してきた。それが、楽しい。

ピアノも変だ。和音を拍頭で叩くが、所々で隙間作って浮遊感を煽った。一通りホーンのソロが回って、再びテーマへ。全員が同じ譜割で吹く瞬間の、複雑な和音の響きにゾクッときて、対話のキメで終わり。

Youtube検索したが、けっこうビッグバンドでカバーされてた。だが、違う。きれいすぎる。なにが違うんだろ。比較的コンボ編成の本テイクでも、なんか整いすぎ。
ソロ云々じゃなく、アンサンブルがカッチリしすぎだ。

検索してカントリータッチの"Hoedown"があった。EL&Pの同曲フレーズもごっそり。

どういうこと?と作曲者検索して、自らの不勉強を知った。原曲がアーロン・コープランドで、オリバーやキース・エマーソンが編曲か。フルコピーのキースに比べて、オリバーは恐ろしく一節だけ取ったな。
EL&Pのバージョンがこちら。

クラシック廉価ボックス


100枚前後のメンブラン製な巨大ボックスのブームから数年経過、今のクラシック廉価盤は企画モノに流行が移ってる気がする。流行やブームと言え、一セット当たり何枚くらい出てるか知らないが。
タワレコのメルマガが一番、上手いこと情報収集に役立つ。以下、面白そうなのを抜粋。

『セオン・コレクション(完全限定盤 / 85枚組)』
〈Sony Classical〉現在の古楽ブームの礎を築いた伝説のレーベル、
セオン(SEON)の名盤を集めた、古楽ファン必携のBOX登場です。

『グレイト・ピアノ・レコーディングズ (30枚組)』
◆Various Artists
〈Sony Classical〉RCAとSony Classicalの膨大なカタログから、ピアノ
録音史上に残る名盤をピアニスト別に30枚セレクトしています。

『ドイツ・ロマン派の音楽集(完全限定盤 / 10枚組)』
◆Various Artists
〈Deutsche Harmonia Mundi〉DHMレーベルの人気BOXシリーズにロマン派の
音楽集が登場。シュタイアーやデムスといった通好みな逸品が揃っています。

『地中海のバロック以前の音楽集(完全限定盤 / 10枚組)』
◆Various Artists
〈Deutsche Harmonia Mundi〉DHMレーベルの人気BOXシリーズその2。

ボックスじゃないが、これも惹かれた。
『伊福部昭:ピアノ作品集』
◆高良仁美(ピアノ)
〈Altus〉幻の作品バレエ音楽「盆踊り」世界初録音を含む、普段あまり
音源化されない作品が多数収録された、伊福部ファン注目の内容です。

で、一番好奇心くすぐったのが『地中海のバロック以前の音楽集(完全限定盤 / 10枚組)』。7月末発売、到着が楽しみ。
独ハルモニア・ムンディ音源で録音は77-09年。権利切れ音源コンピじゃない。その割に3千円程度で10枚組がペイするのか。

内容を簡単に抜粋しておく。
テーマは「地中海の古楽、イスラムとキリスト教圏の混ざる北アフリカ・小アジア・南欧の多彩な文化を概観」。個々の盤の内容は、

【CD1~2】500年の歴史を持つ、モロッコのアンダルシア音楽。

【CD3】ガンバやギターによる17世紀スペインのバロック。

【CD4】イタリアの初期バロックで小品を集めた。ジラーモ、モンテヴェルディ、ロッシなど。

【CD5】紀元前6世紀前後の古代ギリシャでサッフォーの恋愛詩を、アンサンブル・メルポメンが楽曲に仕立て08年録音の音源。唄と舞踊らしい。

【CD6】「地中海とオスマン帝国のスペイン系ユダヤ人(セファラード)伝承音楽を収録」とある。音楽のイメージ湧かない。どんなだろう。

【CD7】小品集で14~15世紀のスペインやアラブにトルコ、ギリシャの音楽集らしい。

【CD8~10】イベリア半島の写本に残されたキリスト教の歌曲集、らしい。

民謡がリラクゼーションに

各国の民族音楽が好きで、あれこれ聴いてきた。だが意外に日本の音楽には無関心。雅楽は何枚か聴いたが、むしろアバンギャルド耳や電子音楽耳を使ってる。つまり伝統の美学耳や日本人的琴線耳は使ってない。

身近すぎるせい。民謡なりが醸し出すセンチメンタリズムは、説明されずともわかる。イギリスのトラッドの香りとは全く違う。逆にトラッドは、身近で無いから「なんだかよくわからないもの」と、好奇心耳で聴ける。

で、ネットニュースより。
『日本の民謡や地方に伝わるうたに注目したプロジェクトが始動』

日本民謡の世界発信をコンセプトの、日本初レーベルVolkutaが始動した。
今日発売の第一弾が奄美大島の民謡、「よいすら節」の12インチ。
A面を奄美の唄者な朝崎郁恵が歌い、B面が札幌拠点のKuniyukiリミックスを収録した。

奄美というある意味内地と異文化な楽曲を取り上げ、さらに極北へ持っていく。何とも南北に長い日本を生かした両面に仕上げた。とはいえ期待せずに試聴音源を聴いた。「どうせ、日本人が聴いたら妙なモゾモゾ感ある仕上がりだろ」って。

しかし。B面Kuniyukiリミックス音源が、予想以上に北欧風の寛ぎ感が満載で驚いた。
ピアノを中心にシンセをうっすら。リラクゼーション風のアレンジを採用した。歌詞もすっと頭に入ってこないため、異文化感が満載。ヒーリングとかデトックスとか、その手の店で流れても違和感ない。

渋いのがリズムのアレンジ。唄のコブシと別でポリリズミックに鳴らし、浮遊感を強調した。確かにこれなら歌のノリを邪魔せず、揺らぎを設定できる。このアプローチなら別の民謡もハマる。

オリジナルの譜割無視でビートを刻みつつ、しっとりな世界を作る。アレンジのセンスにやられた。

コステロがポールとの未発表"Tommy's Coming Home"をライヴで初披露

残る未発表なコラボ曲は"Twenty-Five Fingers"のみ、かな。

ポールとコステロが共作したのは87年、27年前。うわー。時が流れるのは早い。
ポールの"My brave Face"やコステロの"Spike"、その他シングルのB面などで共作曲は発表されていた。だが(たぶん)公式に未発表だったのが"Tommy's Coming Home"と"Twenty-Five Fingers"の2曲。

今回、6/25のNYカーネギーホールで、唐突にコステロがそのうちの1曲、"Tommy's Coming Home"を弾き語りで披露した。どういう心境の変化か分からない。
正確に言うならば「演奏前のMCで言ってるっぽいが、英語が聞き取れない」。

その一昨日前のコステロによるライブ音源はこちら。

この日のセットリストはこちら。渋い曲がいっぱいだ。弾き語りのためセットリストを好き放題に毎日変えている。

当日のライブの様子を、この人がまとめてyoutubeにアップしてる。

今回演奏された"Tommy's Coming Home"を、ポールとコステロのデモ録音(ブート)がこちら。

このクラスになると、音源はぞろぞろ流出してくる。ブートで昔、共演全曲を無理やりまとめた盤も出ていた。カタログ内容はこちらに紹介がある。

そして残る未発表曲"Twenty-Five Fingers"も、もちろんブート音源がYoutubeで聴ける。

The Classmates

Youtubeで意外にドゥワップが聴ける。コレクター自慢とレコ屋の宣伝、相乗効果か。
つい最近アップロードされた音源をなぞってたら、初めて聴いたグループのクラスメイツが気になった。

The Classmatesはニューヨークのホワイト・ドゥワップ。このブログに言及あった。50年代にカリフォルニアでも同名異グループもいるようだ。

ニューヨークのクラスメイツによるディスコグラフィーは以下の通り。
1961 - Homework / Here Comes Suzy (Seg-Way 104)

1962 - All I Want Is To Love You / Some Of These Days (Radar 3962)

1963 - Graduation / Teenage Twister (Radar 2624)
Unreleased:
196? - Hug You, Kiss You
196? - You're Too Late

今回、"All I Want Is To Love You/Some of These Days"(1962)を聴いてて、モダンな和音感に惹かれた。今でも洗練さを感じる。
"Graduation"の分厚く潰れた感じも良いなあ。名曲だ。

Youtubeでシングルを両面、全部聴けた。音盤とか音質にこだわらなければ、もはやレア盤って概念がすごい希薄になってきた。逆に付加価値は資料性とか音質だろう。

1961 - Homework / Here Comes Suzy (Seg-Way 104)


1962 - All I Want Is To Love You / Some Of These Days (Radar 3962)


1963 - Graduation / Teenage Twister (Radar 2624)

Unreleased:(でもなぜか、Youtubeに音源あり)
196? - Hug You, Kiss You

196? - You're Too Late

The Elvis Brothers

93年に吉祥寺のレコファンで何となく買ったCD"Now Dig This"。ふと思い出して、経歴を検索してみた。
今の人は分かるまい。当時はネットなんて無く、情報はラジオか雑誌かレコード屋しかなかったものよ。

Wikiによると解散済。ドラマーがロマンティクスで叩いてるそう。

【Discography】
"Movin'Up"(1983)
"ADVENTURE TIME"(1985)
"NOW DIG THIS"(1992)

たぶんこの3枚のみで解散。イリノイ州出身でメジャーから初期2枚をリリース。2ndはエイドリアン・ブリューがプロデュースだそう。ぼくは双方聴いたこと無し。パワーポップにロカビリー風味を足したのが持ち味で、3rdでの瑞々しいメロディにワクワク来た。
当時は新人バンドと思ってたが、最後の一花だったとは。

Youtubeにしっかり映像あり。まず、1st時代のPVから"Fire In The City"
初めて聴いた。スピード感あるがパンクやサイコビリーと一線引いた、野暮ったい若さが味か。

3rdの頃。95年ライブ映像より、"Ruthy Ann/Let's Stick Together"。
この"Ruthy Ann"がかっこよくて惹かれた。スピーディとハーモニーがぴったりでさ。エルヴィスと言うより、ビートルズ(特にポール)の影響を強く感じた。
検索してたら来日公演のレビューまであった・・。知らなかった。
ttp://www.asahi-net.or.jp/~aw5m-wtnb/e-bros2.htm

3rdからもう一曲。"Strangelove"。ビートルズに加え、英国ポップな甘酸っぱさも足された。

あと、3rdではこの曲も好きだった。"Valentine"。ニューウェーブ経由かな。

ハンディDJ

カット・ケミストとヌ・マークのDJセッション。
ギター型のDJキットってあるんだ。40秒あたりからスクラッチ(?)で"Smoke on the water"を奏でる。

映像は6/13-15にポーランドはワルシャワで開かれたOrange Warsaw Festival 2014より。ジュラシック5は6/15に出演した。
こっちは今年、ノルウェーでの公演より。ぐらぐらな映像だけど、臨場感は凄い。

ちょうど今日、通勤中にジュラシック5の"Quality Control"(2000)を聴いてたところ。カット・ケミストの趣味なんだろうな。スカっぽいバックビート効かせたリズムにワクワク。ほんのりレトロでこじんまり。それでいて、生き生きしてる。
たまたま見つけた、こちらのライブ映像でも5分前後のところで似たようなビートを提示した。12年ブラジルはサンパウロでのソロ公演より。

しかしこの映像は約45分。長い・・。プロショットのマルチカメラで画面は小刻みに変わるし、素早いフェーダー操作も見られるが。さすがに途中で飽きる。BGMには良いが。
踊るでもなく、じっとカット・ケミストを見る観客がいるあたり、ライブっぽいなあ。

サウンド自体はかっこいい。スタート&ストップを織り込み、小気味よいヒップホップを聴かせる。ハウス皿の長回しと違うスピーディーさだ。皿ネタよりDJスキルへ重心置いて、高速スクラッチがとめどない。
かなり、流れは練られてる。本映像の26分辺りには、ここでも"Smoke on the water"を披露した。

ぼくはジュラシック5って、完全に後追い。リアルタイムで聴くべきであった。かっこいいなー。

灰野敬二+太田惠資 DUO 2009

何か知らんが、最近に再アップされていた。ついこないだ、スーデラで共演ライブやったせいかな。
映像3本併せて30分あまり。いまだかつて音盤化されたことが無く、過去の共演も10回に満たぬ程度しかない、はず。

非常にレアながら、とてつもなく美しい強固な即興。
即興巧者ふたりによる、暗黒インプロの断片が楽しめる。聴き逃すな。





ランダム再生の混沌

PCオーディオならではの再生術、その(1)。「各種の弦楽四重奏ランダム再生」。
たいがいの弦カルは楽章ごとにトラックが切られてる。ずらっとランダム再生すると、作曲家も楽曲順も滅茶苦茶に並んでく。ためしに聴いてたら、シュールさが気色悪くて面白い

そもそも作曲家は四楽章で一つの世界を意識し作曲した。これが順序もバラバラに飛び交うと、数分間の小宇宙が断章群で流れていく。一つの楽章は整ってる。だが次の瞬間、時代も世界も脈絡も無く、飛んでいく。諸行無常な美しさ。

こんな面倒な聴き方は、リッピングしたPCオーディオならではの愉しみ。
CDやLPだとやってられない。仮に山盛りCDを積んで、楽章ごとに手作業で切り替えても、盤選択の段階で恣意の順列組合せはありえない。「やっぱ、もう一楽章聴こう」「この次なら、これかな?」とか。

だがPCランダム再生は無常だ。盛り上がったところで次のトラックへ無作為に飛ぶ。このサイコロ運命な冷徹さが、奇妙なスリルを作った。

今のBGM:ハイドン:弦楽四重奏曲第77番ハ長調「皇帝」、第二楽章(作曲:1797年)
詳しい楽曲の解説は、Wikiをご参照ください。
奏者はQuartetto Italiano。ベートーベンの弦カル16番1楽章からスイっと飛んできた。ダイナミズムからクールなロマンティシズムへ。クラシックの詳しいことは知らないが、この楽章は第一バイオリンの高音域メロディを第二バイオリンとチェロが、まとわりつくように支えた。
それでいて、どっか冷めている。穏やかに、静かに。旋律がふわふわと流れた。美しさがにじり寄る。

あ。今、楽曲が変わった。次はショスタコの9番、5楽章。演奏はブロドスキー・カルテット。正確冷徹な演奏がスリルを高める。流れが脈絡無くて、居心地が悪い。もぞもぞする。変なノイズ・コラージュみたい

口内炎

唇の先に出来て、痛え。ちょうど今はピークを過ぎ、治りかけてる過程と思う。毎日のように痛みが増してきたけれど、ピークは越えてるはず。きっとそのはず。
湿らせるのと、乾燥させるのと、どっちがいいのやら。とりあえず起きてるときは、無意識に舐めちゃってる。

ということで、ふと聴きたくなった一枚。じっくり感想も考えてみた。

<今のBGM>"Enigmata"John Zorn(2011)
本アルバムはとっつきの悪い、スルメな音楽。12曲で44分ほどの作品だ。
TZADIKより11年7月に発表された。録音は10年3月と11年3月に実施。
ギターとベースのデュオだが、一本調子の音色と構造の読みづらさ、不協和音を狙い親しみやすさをシャットアウトした。クリムゾン好きのプログレ文脈なら、すんなり聴けるかも。
TAZIKのキャッチフレーズは「ビーフハート meets シェーンベルク」

本盤は2010年秋から現在まで毎月のようにリリースが続く、膨大なソロ作品の一部だ。
ジョン・ゾーンはMASADAを筆頭にしたライブでのダイナミズムから、明確に構成した作曲家へと立ち位置の主軸を数年かけてジワッとずらしてる。アルバム・タイトルは"Enigma"の複数形で、語義では"謎"。だがジョン・ゾーンの事だから、ナチスのローター式暗号機から取ったか。

ぱっと聴いて、どう味わうか戸惑う一枚。
音色こそ激しく歪ませてもディレイやリバーブの飛び道具は希薄で、音程の流れは明確なマーク・リボーのエレキ・ギター。高音域も積極的に当てていく、芯の野太いトレバー・ダンのエレキ・ベース。
テクニシャンの二人が演奏する本盤は、かなり楽譜要素が高い。ひょっとしたら即興じゃ無いかも。

ジョン・ゾーンらしく、断片を脈絡無しに積み上げる。だが他作品ほどスピード感が無い。疾走をあえて抑えたか。フレーズの繰り返しも多く、この二人のテクニックならテンポはもっと上がるはず。意識的なミドル・テンポの配分と思う。
次々に提示される短いパターンや旋律を、希薄なストーリー性で流してく楽曲群のスピードは、むしろ遅めだ。ジョン・ゾーンにしては、異様なほどに。

スタート&ストップも揃う。全休符のタイミングが二人とも零れないあたり、いかにも譜面っぽい。面白いのは急停止にも、スポーティな爽快さを感じさせぬところ。ダイナミズムを狙うなら、盛り上がりやフレーズの急峻な切り落としで休符、のアレンジもある。むしろゾーンの他作品は、強烈なブレーキっぷりも味だった。
だが本作は違う。のっそりと恐竜が動いては休むがごとく、じわっとフレーズが止まり、すぐに二人が揃って動き出す。

二人はユニゾンを注意深く避けた。時たま譜割やフレーズの前後で合わす程度。互いにカウンターを当てて産む和音は、強靭ながら不安定な響きを提示する。
ちなみに小節線も良くわからない。ミニマルな場面でも拍子は読みづらく、変拍子びしばし?だが縦の線に無秩序さは全くない。楽曲により、うっすらとカントリーっぽい音使いも。音色の歪みっぷりはさておいて

このパターンがアルバム全編を貫いた。いくぶんスピーディで、コードをかきむしる(7)から、一転して唯一ブライトな音色でスリリングに迫る(8)。対比的なギターが味わえる、この場面がお薦め
特に(8)は歪まぬ音色でミニマルな展開をきっちり持続した。無秩序とは逆ベクトル。本盤が作曲性を、わかりやすく象徴する重要な一曲だ。

とはいえ基本的にはどの曲もぱっと聴いただけでは、各曲の切れ目すら判然としない。12曲のトラック切りも必然性から、まず想像する羽目になる。数学的な複雑さをあえて狙い、コンセプト先行で聴きやすさを切り捨てる。いわば異物さを前面に出す、いかにもジョン・ゾーンらしい一枚。

相反する魅力を備えた盤だ。
彼のキャリアを代表する楽曲、とは言わない。だが聴き捨てるには惜しい一枚。もっとも繰り返し聴くことを薦めにくい。でも聴きこむと、強烈な味わいが滲みでる気もする。
ということで「とっつきの悪い、スルメな音楽」とまとめる。